03.オニババ化する女たち(三砂ちづる)

随分前に話題になった一冊をやっと手にする機会を得て読みました。
読み始めるとすいすい読めて,一言で感想を言うならとても面白かったです。

この本のレビューはアマゾンで見ても本当に賛否両論あるのですが,とてもデリケートで語りにくい部分をテーマに取り上げて語っているからでは無いかと思ったりします。

私がこれまで考えていたことと,この著者の主張がリンクする部分が結構あります。

  • 女性が自分の身体と向き合わずにいると,本来持っている性や生殖のためのエネルギーが行き場を失い,人として辛いことになる
  • 女性には月経や出産・子育てなど,自分の身体と向き合うとても良いチャンスが与えられている
  • 「お産は痛いもの」,「子育ては大変で骨の折れる仕事」であることは,一つの側面として間違ってはいないけれど,一般的なイメージとしてお産や子育てはそればかりでは無く,ポジティブな側面も多々ある。
  • お産は自然と繋がる体験

妊娠すること,出産,子育ては,自分の意思だけでは本当にどうしようもできない経験が続きます。
私は梅男を育て始めた頃,まだそれがはっきり分かっておらず,どうにかして自分で周りをコントロールしようとしていたんだと思います。そうすると歯車が上手く回らず,結局は自分がしんどくなるし,一番弱い子どもにツケが回ってくるんですよね。そういう経験とそこからの気付きから,自分と自然との繋がりを実感できる様になりました。
自分ではどうしようもできないことが世の中には沢山あるんだ,自分はその中の一部なんだ,と思うことで,それまでの生きにくさが随分減りました。その頃から,本当の意味で自分の身体を大切にできる様になったと思います。

二人目の時は,妊娠するところから自分の身体の声を大切にしつつ始めたので,とても経過が良く,お産自体も(この本に書かれているほどの凄い体験は出来ませんでしたが)陣痛を気持ちよく乗り越えることができ,いざ出てくる瞬間の身体の変化も分かったし,子どもにやっと会えた瞬間に感動して大泣きしたほどでした。あんなに素敵な経験は,人生の中でお産くらいしかないのでは無いかと本当に思います。
良いお産をすると誰かに伝えたくなる,という気持ちも,やっと二人目のお産の後に実感できました。
一人目のお産の後に,自宅出産した人がやたらとお産の話をするのに,どちらかというと不快な気持ちを抱いていたのですけどね。
やはり自分の身体を使って長い時間をかけて経験しないと実感できないことだと思います。
本の中でも,マラソンランナーのランナーズハイが紹介されています。「至高体験」と書かれていますが,何もこの素敵な体験はお産だけに限りません。

アメリカの心理学者であるチクセントミハイの言う「フロー」の状態と同じだと思うのですが,時間感覚を忘れるほどのとても楽しい経験は,有能感を高め,病気を回復させるほどの力も持っていると言われています。

  • 子どもが小さい頃は,仕事を忘れない程度の短時間労働をして,子どもが成長するにつて仕事を増やしていけば良い

これに対してレビューで反論している人が意外と多いのに驚いたのですが,私はこの意見と同じ考えを今は持っています。
職種にもよりますが,私の仕事の場合は少しでも職から離れていると時代が変わってしまいますから,著者が言う様にキャリアを積む意味でもできる範囲で仕事をすることはとても有効だと思っています。
実際,一人目の梅男の時は二歳からパートを始め,三歳になってから常勤で働きました。
子どものこの時期の成長は著しく,また,病気もよくします。
なので,子どもの様子を親が充分に把握する為にも,フルタイムの仕事だとちょっと難しい部分があるかな?と実感しました。
乳幼児期は親を必要としている時期だから親が看るべきという意見もありますが,我が家の場合,日中家に私くらいしかおらず,四六時中子どもと一緒だとお互いに疲れてしまうので,少しくらい仕事に出るのが気分転換になって良いと思います。一緒に過ごす時間の長さよりも,一緒に過ごす時間の質を大切にしたいと思っています。
私の場合,職種もそうですが,良い保育園に入れたことも仕事が続けられる理由の一つにあると思います。
安心して預けられないとおちおち仕事もしていられませんもんね。
経済的には,正直言うと厳しいですが,子の保育園は,さくら・さくらんぼ保育を取り入れているので,身体作りという意味での英才教育の一つとして今の保育園に通わせているという気持ちもあります。

  • 病気は,自分の身体と向き合うための機会を作っている
  • 昭和初期生まれから生活様式が変わった

これは私のちっぽけな経験から感覚的に思ったことなので,誤解を招かない様にしたいのですが,病院に入院されている方のリハビリテーションに携わっていたとき,明治生まれの方(もう90代後半ですね)の足腰の強さには本当に驚きました。
と同時に,大正生まれの方,そして昭和初期生まれの方になるにつれ,足腰が弱くなってくのを実感しました。
この「足腰の強さ」というものの実態は何だろう?と考えていましたが,どうやら自分の身体の使い方,身のこなしが違う様に思われました。どう違うのか?と聞かれると困るのですが,明治生まれの人はサムライの様な身のこなしといいますか・・・。(ASIN:4334032664


オニババ化する女たち 女性の身体性を取り戻す (光文社新書)