08.「作業」って何だろう―作業科学入門(吉川ひろみ)

「作業科学」について平易な日本語で読める入門書を再読しました。

価格もお手ごろだし,本当にお勧めの一冊です。
医療の中の作業療法士の間ではあまり前面に出てこないとされる,作業における「文脈」や「主観的意味」の大切さを訴えています。


この本の中でも,作業には生存のための基本的ニードを満たす機能があるというところに興味を持ちました。
近代化してからの現代の方が,狩猟時代に比べて基本的なニードを充足できていないというものです。
資本主義社会になり,労働の対価として「お金」が得られる様になったことで,自分にとって必要なもののために働く(作業をする)機会が失われているという見方です。
この様に,「作業」の視点から,社会の変化をも説明ができるということは重要なことだと思います。


作業科学が注目されるということは,自分のしていることを上手い言葉で説明できにくい面が作業療法にはあるからだと思います。
最近,後輩がケーススタディをまとめていて,それを手伝っていたのですが,まさにここで作業科学の視点を使ったらうまく説明がいくのになぁと思った点が随所にありました。

クライエントにとって大切で意味のある作業ができることを目指した作業療法を自然と行っているセラピストは,実際には大勢いるのでは無いかと思います。ただ説明する言葉を持っていないだけで。
作業療法の今後の発展のためには,作業科学は欠かせない学問であると,私は思います。(ASIN:4263213122)

「作業」って何だろう―作業科学入門